別居したい妻が考えるべき離婚・復縁に向けた別居準備
「別居して距離を置いたほうがいいかも」
「夫の言動に耐えられない」
「夫婦喧嘩ばかりして子供に申し訳ない」
夫婦間の関係が悪くなると、別居をしたほうがいいと考える人も多いでしょう。
でも実際に別居した場合、夫婦関係やお金の問題、子供たちはどうなるのか気になりますよね。
今回は夫婦の「別居」について解説していきます。
Contents
別居は基本NG!法律では夫婦は同居するもの
まずは別居の定義とはどういったものでしょうか。
これは誰でも知っていることでしょう。
しかし、夫婦に同居義務があるというのはご存知でしょうか。
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」民法725条
でも世間には単身赴任以外でも「仲良く」別居っぽくなっている夫婦はいくらでもいますよね。
実はこの同居義務は「一緒に住まなければならない」ということではなく、「どちらかが同居を望めば別居してはいけない」というルールなんです。
だから、夫婦で合意さえしていれば別々に住むことが可能というわけです。
【別々に住む理由】
- 共働きで片方が転勤
- 子供を転校させたくない(単身赴任)
- 親の介護で動けない
- 卒婚(合意のもと離婚せずにお互い好きなように生きる)
夫婦間に合意がなく、夫婦の一方が勝手に出ていった場合の別居は「悪意の遺棄」として、離婚を請求することができます(民法770条1項2号)。
例えば、浮気相手や不倫相手の家から帰ってこないなどがこれにあたります。
別居を検討するタイミング
別居を検討するのは、
- 性格の不一致
- 不貞行為
- 暴力・侮辱・虐待(DV)
- 性生活への不満
- 同性愛・性的不能
- 配偶者の親族との不和
- 過度な宗教活動
- 犯罪行為による服役
- 金銭問題 など
のような夫婦間で修復しがたいことが発生した場合です。
別居しないほうがいい場合
ただ、以下のような時には安易に別居の選択をしないほうがいい場合もあります。
自分に非がある時
自分が浮気をしたなど、自分に非がある場合に率先して別居をしてしまうと、「非を認める」ことになります。
そうすると離婚をする時に不利な条件を飲まざるを得ない状況になることがあります。
夫婦関係の修復を望む時
別居を考えるほど腹立たしいことがあっても、関係を修復したい場合には、別居をしないほうがいい可能性があります。
というのも、別居をした夫婦の7割以上は1年以内に離婚してしまうというデータが、厚生労働省の調査結果としてあるからです。
別居のメリット・デメリット
別居をしたときのメリットやデメリットにはどういうものがあるでしょうか。
別居のメリット
一人の時間ができる
パートナーに何らかの原因がある場合には、別居して一人になることで精神的にも肉体的にも開放され、ストレスが軽減されます。
また、一人になると物事を冷静に考えられるので、自分の未来をじっくり見つめることができます。
離婚事由を作れる
一方が離婚を希望している場合、同居していると婚姻破綻が認められにくいことがあります(家庭内別居は立証が困難なため)。
別居することで裁判所によって離婚を認められる可能性が高くなります。
離婚のプレッシャーを与えられる
別居の意志を示すだけでパートナーに「離婚の可能性」を暗に伝えることができます。
離婚はしないまでも、相手に何か改善を求めたい場合に別居することで心を入れ替える可能性があります。
生活費請求ができる
離婚すると財産分与はありますが、子供の養育費以外の生活費の請求はできません。
しかし、別居では相手より収入が少ない場合、別居後に婚姻費用分担請求(生活費の請求)をすることができます。
婚姻費用とは別居中に支払う生活費のことです。別居中でも夫婦は生活扶助義務があるので、収入の多い方が少ない方へ生活費を支払う義務があるのです。
子どもが安心する
夫婦関係の悪くなると、それを感じた子供は「両親が不仲なのは自分のせい」だと責めてしまうことがあります。
また、暴言などを聞くと子供の脳は委縮して学力の悪化などの悪影響があると言われています。
別居して両親が精神的に安定すると、子供も安心することがあります。
別居のデメリット
離婚を請求される
離婚を望んでいなくても、自分から別居してしまった場合、婚姻を継続し難い理由になる可能性があります。
その場合、自分が離婚を望んでいなくても、相手が望めば離婚が認められる可能性が高くなります。
新しい生活基盤が必要
別居後に婚姻費用分担請求(生活費の請求)ができるとはいえ、今まで2人分の家計だったのが別々になるので、住居の確保や生活する為の経済的な負担が大きくなってしまいます。
離婚する可能性が高まる
先ほども書きましたが、別居する夫婦は1年以内に離婚する可能性が7割超えているので、関係の修復を希望していても離婚の方向に進んでしまう可能性があります。
修復を希望する場合には、お互いの心の冷却期間として期間を決めて別居するほうがいいかもしれません。
証拠収集が困難になる
相手の浮気などが原因の場合には、証拠を集めたりすることが困難になりますし、今後離婚をする可能性がある場合も財産などを調べにくくなることがあります(自分が出ていった場合)。
恋愛ができない
別居というのは夫婦が離れて暮らしているだけで、婚姻関係は法律上「ある」ことになります。
お互いに愛が冷めていたとしても、パートナー以外と恋愛をした場合、相手から不貞行為と見なされ、慰謝料や離婚請求される可能性があります。
子供が不安定になる
メリットでは親の精神状態が安定することで子供も安心するとありましたが、逆に両親が別居するのは「自分のせい」だと思う子供もいるので、子供が精神的に不安定になることもあります。
別居をする時の準備
離婚をする時ほど大変ではないにしろ、別居をする時にもいろいろなことを考えないといけません。
夫婦間で話し合い
別居というのは最初に書いたように夫婦間の合意がないと成立しません。
ですから、夫婦の一方が別居の意思がある場合、両者で合意をする必要があります。
合意した場合には、婚姻費用や子供との面会等の取り決めをします。
ただし、DVを受けているなど緊急性のある場合は話し合いや合意の必要はありません。
生活基盤の確保
家を出ていく場合には新しく住む家を探さなければなりません。
また、離婚前提の場合、仕事に就いていない人は生活を維持するための収入が必要なので仕事を探す必要があります。
財産の把握
自分名義の通帳、印鑑、身分証等は持って出られるよう確保しておくのはもちろんですが、離婚をする可能性がある場合には、パートナーの財産も把握しておく必要があります。
もし離婚になった場合、財産分与が生じるので、資産をごまかされないよう証拠を取っておくわけです。
別居前にしておかないと、自分が出ていった場合、配偶者の許可なく元の住居に入ることは住居不法侵入になるリスクがあるのです。
【チェックしておきたいこと】
- 預貯金の把握
- 持ち家の資産価値
- ローン残高
- 保険証券・有価証券
- 所得証明
- 自家用車の価値 など
証拠の収集
不貞行為、DV、モラハラ等、配偶者に明確な落ち度がある場合、証拠を残しておくことが必要です。
こちらも別居前にしておかないと、自分が出ていった場合、配偶者の許可なく元の住居に入ることは住居不法侵入になることがあります。
婚姻費用の算定
別居の場合は、収入が多いほうが少ないほうに生活費を支払う義務が生じます(婚姻費用)。
婚姻費用算出は、夫婦の年収格差や子供の人数、お互いの就業形態によって算出できます。
算出方法は、裁判所や弁護士事務所のwebサイトなどで公開されています。
>>参考:養育費・婚姻費用算定表 |裁判所
ただし、夫婦間で金額等の合意・納得がある場合は、婚姻費用算定表による金額の強制はありません。
離婚不受理届の提出
離婚不受理届とは、パートナーが勝手に離婚届を提出してしまうことを防ぐもので、一度提出すると取り下げをしない限り無期限で有効になります。
パートナーが勝手に署名・捺印を偽造した場合、離婚を無効にすることはもちろんできるのですが、手続きが煩雑になります。
また、「今度浮気したら離婚」と言って、不用意に離婚届に署名・捺印する場合もあるので、そういう離婚届が受理されないように防ぐという目的もあります。
離婚届が受理されると、婚姻費用の支払い停止、親権が決まってしまうなど、不本意なことが起こってしまう可能性があるので離婚不受理届は必ず出しておいたほうがいいでしょう。
まとめ:別居も大変
調べてみると、離婚もかなり大変ですが、案外別居も大変だということがわかります。
よっぽどのことがない限り別居の選択は避けたほうがいいのかもしれません。もしくは期間をしっかりと決めて、「しなくてもいい離婚」を防ぐことも大切かと思いました。
個人的には夫婦仲が良くても離婚不受理届だけは出してても良さそうだと感じました(笑)