産後クライシスとは?症状チェックと解決法、夫と離婚しないために
産後クライシスという言葉を知っていますか?
これはNHKの情報番組から生まれた言葉で、クライシスというのは崩壊とか危機といった意味があります。
簡単に言えば「産後に夫への愛情が無くなって夫婦関係が崩壊していく」というものです。産後クライシスにならないためにはどうすればいいでしょうか。
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産後クライシスとは
産後クライシスというのは造語なので、学術的な定義というものはありません。ただ、NHKで放送された当時には反響がものすごくあったことから、多くのママに共感をされた、つまり産後に夫への愛が薄れたり、夫婦仲が悪くなるということはよくあるということですね。
産後クライシスの存在を否定できない統計
産後クライシスは出産後、子供が2歳~3歳になるくらいまでが一番ピークと考えられています。
実際に厚生労働省の調査によりますと、母子家庭になる(つまり離婚する)時の子供の年齢を見てみると、0歳~2歳と3歳~5歳を合わせると約58%と過半数を占めています。
参考: ひとり親世帯になった時の親及び末子の年齢 |厚生労働省
また、産後クライシスを象徴するデータがベネッセ次世代育成研究室が調査した「配偶者への愛」に関する調査結果では、結婚して妊娠した時点では夫婦ともにお互いを本当に愛していると感じていたにもかかわらず、子供が生まれ2歳になるころには妻から夫への愛情が激減していることがわかります。
逆に夫から妻への愛情はそんなに変化がないということなので、いかに産後で夫婦のすれ違いがあるかが伺えます。
産後クライシスの原因
NHKの当時の番組で言われていたことでは、産後クライシスの原因には「ホルモンバランスの乱れ」と「夫婦の子供への関わり方の相違」の2つの要因によって引き起こされると解説していました。
ホルモンバランスの乱れというのは、出産後は「オキシトシン」というホルモンの分泌量が増えるということです。このオキシトシンは、子供を守るために分泌され、子供に害をもたらすものに対して攻撃性を高める作用があると考えられています。
さらに、【子供に害をもたらす】=【育児に非協力的な夫】と置き換えることもできるので、夫婦間の仲が悪くなると考えられています。
夫婦の子供への関わり方の相違というは、実際にお腹を痛めて産むのは女性であり妻です。子供は夫婦のかけがえのない宝ものに違いはないのですが、夫が子供を本当に宝物だと実感するのには少し時間がかかります。
逆に妻は生まれた瞬間からホルモンの影響もあり、子供への母性がとめどなくあふれてくるんですね。だから何より子供を優先しますし、その子供を優先しない夫を非難してしまいます。
この相違がオキシトシンの作用の一つである【非協力的な夫】=【子供の敵】とみなすことへつながると言われています。
産後クライシスの症状チェック
産後クライシスかどうかは自分を客観視しないとなかなか自覚しにくいものです。
以下のチェックリストに自分が当てはまるかどうかをチェックしてみてください。
- 夫に無性にイライラするときがある
- 産後から夫への関心が薄れてきている
- 夫を愛しているかどうかわからない
- 夫は子供に興味がないような気がする
- 夫に触れられるのが嫌になってきた
- イクメン夫がうらやましく感じる
- 人から産後に性格が変わったと言われる(悪い意味で)
- イライラすることが多くなった
- 夫婦の会話が確実に減ってきている
基本的には産後に夫への愛情は薄れてくるのはよくあることなので、夫に嫌悪感まで抱いてくると赤信号といえるでしょう。
あとはイライラすることが多くなったり、夫婦間でコミュニケーションが減っている場合も要注意です。
産後クライシスに陥りやすい人の特徴
産後に夫への愛情が多少薄れるというのは誰しもあることですが、産後クライシスのような著しく愛情が無くなり嫌悪感まで抱いてしまうというのは性格や環境の影響もないとは言えません。以下のような人は要注意です。
育児が初めての人
出産が初めての場合は、何もかもが初めての経験になるため、不安や責任に押しつぶされてしまうことがあります。それを理解してくれない夫の態度に愛情が冷めてしまうということも。
完璧主義の人
完璧主義で何もかも100点を目指したがる人は、子供がマニュアル通りに育たないことに苦しみます。子供にはそれぞれ個性があって当たり前、よその子と比べたり、思い通りにいかなくてもそれをありのまま受け入れる寛容な心が必要です。
また、イクメン夫などの話をテレビや近所で聞いたりすると、自分の夫のふがいなさに失望するケースもあります。イクメン夫は世間で騒がれるほどは存在しないので夫に子育てで期待しないという姿勢も持っておきたいですね。
夫が亭主関白傾向にある
結婚して専業主婦になった人は、子供がいない新婚当初は夫の世話を献身的にするので亭主関白になりがちです。そのまま出産をして子供ができると、子供の世話と夫の世話で負担が2倍にも3倍にもなります。
夫が子育てに積極的に参加をしてくれるような人ならいいですが、育児も家事も妻がやるものと決めつけている夫がいる場合は産後クライシスになりやすいでしょう。
夫婦で趣味を持っている
夫婦共通の趣味があったり、お互いに没頭できる趣味がある場合、出産を機に趣味ができなくなって(自分の時間がなくなり)イライラする場合があります。
お腹を痛めて産む妻は母性が生まれて、趣味より子供に向き合えるのですが、お腹を痛めてない夫は自分の時間が減ることに耐えられない場合があります。
仕事が終わって少ない夜の自由時間をゲームなどの趣味に費やす夫を嫌いになってしまったり、自分は趣味をあきらめているのに夫は趣味を楽しんでいると妬む気持ちが生まれたりします。
両親が近くにいない
子育ての大先輩である両親に子供のことを相談したり、預けたりといったことができない環境にあると、ママへの負担が大きくなって産後クライシスになることがあります。
産後クライシスにならないためにはママのストレス発散が大事ですから、夫の協力だけでなく、自分の両親ならびに夫の両親にも協力してもらう環境が好ましいです。
ママ友がいない
初めての出産で、保育園に行く年齢に達していない場合は、自宅で子育てを一人でする人も多いでしょう。その場合に育児に共感をしてもらえるママ友がいないと、不安やストレスがたまることがあります。
役所や行政で子育て支援などをやっていることがあり、そういうセミナーなどに参加すると同じ年齢の子供を持つ近所のママと出会いやすいので行ってみるといいでしょう。
産後クライシスの解決法
産後クライシスによって夫婦仲が悪くなって最悪離婚になってしまうケースでは、お互いに産後クライシスという状況を認識せず知識もないために起こっていることがほとんどです。産後クライシスを緩和するためにはどうすればいいでしょうか。
そういうものだと自覚する
まずは産後クライシス、つまり産後は夫への愛情が薄れるものだし、イライラしやすくもなるし、そういうものだと自分で認識しておくことが第一です。特に意識したいことは以下です。
- 夫への愛情は薄れて当たり前
- 夫が父親の自覚を持つのは時間がかかる
- 夫は育児の大変さを理解できないもの
- 子供は思い通りに育たない
- イクメン夫は幻想である(実は少ない)
夫に産後クライシスのことを教える
自身が産後クライシスのことを理解し、自覚したら、それを夫と情報共有しましょう。
ほとんどの妻は産後に愛情が薄れること、それは一時的であること、育児は大変だから頼りたいということ、などを夫に伝えます。
夫が産後クライシスのことを理解できれば協力的になることもありますし、思いやりがあれば妻のイライラも受け入れてくれるでしょう。
子供はみんなで育てる意識を持つ
産後クライシスになりやすい人は、母親である自分が子供を育てるべきという思い込みが激しいこともあります。
子供は思い通りに育たないのが当たり前ですし、両親などの子育て経験者のほうが子供の扱いに長けていることも事実です。
自分だけで育児を完結させようとせず、負担を感じたら夫や両親に頼って、できるだけストレスをためないように心と体を整えることが大切です。
子供の未来(産後クライシスの終わり)を想像する
0歳から2歳くらいまでは育児に終わりが見えないような気がして、一生子供に縛られるのではと不安になりがちです。
しかし、子供は成長すればするほど手がかからなくなるので、実際には負担は減っていきます。子供に自我が芽生えると夫もようやっと父親の自覚も生まれ、育児に積極的になってきます。
それを想像すればいくらか気持ちは楽になると思います。
産後クライシスというのは夫への愛情が急激になくなることですが、子供の成長とともに夫への愛情もまた生まれてくるということも確かです。子供が2人、3人と欲しくなるのもその証拠。(夫が育児に参加してくれる良き夫の場合に限りますが)
辛くなったら専門機関に相談を
夫にも両親にもママ友にも誰にも頼れずに一人で苦しんでしまっている場合には、一人で悩まないで専門機関への相談をおすすめします。
市や行政などが無料で相談できる施設を運営しているので、気軽に相談してみてください。
国や自治体が運営している女性支援施設
国や自治体でも各都道府県に女性のための支援センターを設置しています。
日本助産師会が運営する支援センター
妊娠・出産・子育てをはじめ、思春期、更年期、不妊の悩みなどなんでも相談できます。来訪しての相談や、ご家庭に訪問しての相談、学校等への講師の派遣なども行っているようです。
夫婦で産後クライシスを乗り越えよう
産後クライシスという言葉の響きが強烈ですが、これはどんな夫婦間でも大なり小なり起こりうることです。
日ごろから夫婦のコミュニケーションがしっかりとしていれば、産後クライシスという状態も、妻の体や心の変化も夫の気持ちも共有できると思います。
最終的には夫婦や家族の問題になるので、2人で乗り越えるしかありません。そのためには夫婦二人三脚で育児に向き合っていくしかないでしょう。